夏の魔物

 

玄関で起きた。朝4時、激しい不快感で目を覚ますと身体が汗でぐっしょりしていたのですぐにシャワーを浴びた。もう一度寝るにしては目が冴え過ぎていたので散歩に行くことにした。まだ太陽が出たばかりだった。

 

地図も見ずに知らない道を歩いたら、大きな公園があった。木がたくさん生い茂っていて、真ん中を流れる川にはオオカナダモがたくさん生えていてなんだか気持ちよさそうに揺れていた。たくさんの犬が散歩をしていて少年が父親とサッカーの基礎練習をしていた。太極拳をするおば様方と目が合った。

 

木陰に囲まれた坂を登った時、濡れた土と草の匂いがした。その瞬間、小さい頃によく祖父母と一緒にここと同じような大きな公園で運動会みたいなお弁当箱いっぱいにおにぎりやら唐揚げやらを持ってピクニックをしたことを思い出した。祖母の作るおにぎりはとてつもなくデカくて歪な丸い形で、海苔が一面に巻かれていてアルミホイルで包んである。中身は全部梅だ。飲み切らないほど大きな水筒から麦茶を注いで一気に飲んだ。祖父は冗談を言って私を笑わせ、祖母は大きな口を開けて豪快に笑う。帽子被りなさいよ、虫除けしなさいよ、と言われた。

 

祖母のおにぎりや麦茶の味を思い出しながら、来た道を辿って家に帰った。太陽はすっかり頭の上に登り、額に汗がじんわり滲んだ。

 

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