ノーウーマン・ノークライ

 

思いつきで髪を結構切って染めた。数時間前まで髪を切るなんて毛頭思ってなかったのに。本当に出来心だ。ボブマーリーみたいな人が私の髪を切ることになった。

 

最初は黙々と私の髪を切っていたボブマーリーが、突如堰を切ったように「こんなナチュラルな髪型ばかり作るところなんて早く辞めてブラックカルチャーとか音楽とか、好きなものしかない場所を絶対作ります。」と言った。そのあと、その人の思い描く好きなものしかない場所の壁やら置く植物の種類やらの話を聞いた。私のナチュラルな髪型を作りながら。

 

その瞬間はヘェスゴイとかクソつまらない返答しかできなかった。なんとも言い表せない気分になって下を向いていた帰り道、丁度ラフォーレの前で定期を落とした人がいたから拾って渡した。

 

その後に乗った電車で久し振りに昔の自分の劣等感が生んだ強く激しい原動力みたいなものを思い出した。いつの間にかどこかに落としていたものを拾ってもらった気がした。なんでそんな話をしてくれたんだろう。私の発したぽつりぽつりとした言葉からあのラフォーレの前の定期みたいに何かが落ちていたのかもしれないし、気まぐれかもしれないし、私の何かに怒ってたのかもしれない。それはボブマーリーのみぞ知るが。

 

真っ黒に染められて真っ直ぐに切りそろえられた髪の毛をいじりながら、思い出した自分の原動力とかについて考えたけど、結局よく分からなかった。この毛が前みたいに金色やオレンジ色のバラバラの長さだったら、また何か違ったことを思ったのだろうか。とにかく、鉄は熱いうちに打て。そう思ったのでこうして日記を書いている。もう忘れたくねぇんだよ。

 

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