祖父が癌になった。2回目だ。もう手術はできない。でも、祖父は生きたいという。群馬県で初めて、80代になって抗癌剤治療を始めた。その時、祖父と祖母に手紙をかいた。

 

今日は久し振りにポストを開けた。10月25日、祖母から手紙が届いてた。ヒロシがいなくなる人生が想像できなくて、自信がなくなった、と書いてあった。どうしようもできなくて泣いてしまった。いつも笑っている祖母の顔しか知らなかった。完ぺきな人間なんていないのです、今のままのあなたでいてください、こんな時にも私の心配をする祖母に、また、泣いてしまった。電話をすると、祖父は「元気だよ」と言う。元気な訳がないのに。祖父が以前癌になった時、幼い私は手術室へ行く祖父がじゃあね、バイバイ、と言うと「バイバイしない」と言ったらしい。大きくなった今だって、バイバイなんかするもんか。

 

私は思うだけ、何もできない。かなしい。自分で言うのもなんだが、祖父母にたくさん愛されて育った。貰ってしかいない、まだ何もあげられていないのに、どうして。手紙のまた会おう、という部分を何度も何度も何度も何度も、読んだ。私も、みんなも、いつか死ぬ、でもせめて、誰かに「いなくなる人生が想像できない」と思ってもらえたらどれほど幸せだろう。今のままのあなたでいてください、が耳の奥で何度も何度も聞こえた。

 

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