朝ごはんを食べる気力がわかなくなった。伸び放題の髪の毛は整えなくなった。肌荒れの酷い顔に施す化粧は適当になった。どうせそんなやつれた自分には勿体無いので香水をつけなくなった。正月は実家に帰れないかもしれなくなった。遅刻スレスレが常態になった。電車で足を踏まれて腹が立った。どんどん奥へ押し込まれる満員電車に苛立った。電話口の冷たい人に舌打ちした。そそくさと先に帰る同僚を見てやる気が失せた。昨日食べた、慣れ親しんだラーメンを、不味いと感じた。仕事が終わらなくてようやく乗った電車でマフラーに埋もれて寝ても寝た気がしなかった。最寄りの駅に着いて、ため息をつきながら家に帰る途中、ファミリーマートの「中華まん100円」ののぼりが目についた。吸い込まれるように入って行き、肉まんを買った。歩きながら食べた。
別に気分が良くなりはしないし、もやもやとした疲れが取れるわけでもないが、少し美味しかった。少し美味しい、という気分になれた一瞬があっただけで今日は良かったということにした。なぜこんなに疲れているのだろう。よく分からない。こういうのは寝て解決だ。すぐに寝たら、だいぶどうでも良くなった。多分今中華まんを食べても昨日ほど美味しく思えないかもしれないから良かったのだ。多分。
