Only you

 

後部座席で関越自動車道の無機質な灰色の壁を眺めながら、コソコソとオヤツを食べている。車は混んでいて、父親と母親がどこで高速を降りるか話している。

 

いつもなら寝る時間だ。パーキングエリアで休憩するらしい。トイレ大丈夫?母親が聞く。大丈夫、と答えてファミレスのレジの横みたいなおもちゃコーナーで1人待つ。

 

車に戻り、父親がカーオーディオにカチッとCDを入れて、ウィーンという音とともに再び車を走らせる。ウトウトしながらももう少し起きていたい。カビ臭いエアコンの匂いがする。

 

もうじき閉じそうなまぶたの中、プラターズが愛を歌って、街灯が走る。

 

 

慣れ親しんだ子供部屋と夜の匂いがふと、私のまぶたに映した。

 

 

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